前回のエントリーでは、日本の雇用問題を扱い、その中で外国人移民がより入ってきやすいシステムはどのようなものか、考察を加えました。
そのときに指摘されたのが、そもそも日本の歴史を考えた上で、移民を受け入れることが可能か、必要か否かというコメントをもらいました。
今回は日本の歴史を俯瞰した上で日本がどのような方向性を志向すべきか考察しようと思います。
このことを考えるに当たって読んだ本を紹介します。
この本では、戦国時代以来、この国がとった戦略は三つに収斂するとされています。 以下、概略を述べます。
1.国際日本モデル 信長が理想に描いた日本のモデル。 西洋という新しいアクターが日本近海に現れたため、中国と大陸東北部勢力の相手のみをしていた日本外交を大きく変えることになりました。 その西洋が持ち込んだ主権国家体制に則り、対外国と協調し、対等につきあっていくモデル。
2.大日本モデル 秀吉が理想に描いた日本のモデル。 大陸の諸勢力、特に中国が弱体化したときに、アジア諸国を日本の影響下におこうとするモデル。
3.小日本モデル 家康が実現したモデル。 対外的に影響力を拡大するのではなく、日本国内にその資源・人的エネルギーなどを活用していくモデル。日本が力を失って小さな日本になる、という意味ではなく、持っている大きな力をより内にため込んでいくものである。
日本は戦国時代以来、この3つのモデル及びそれを組み合わせた国の形をしてきたといえます。
明治国家設立期は、西洋列強と対等になるために国際日本を志向し、日清戦争、日露戦争、一次対戦を経て、大陸諸国に対しては大日本モデルを一方でとっていきました。 戦後は、失墜した日本の国際的信頼を取り戻すため、徹底的に国際日本を志向し、憲法にまで”平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して〜〜国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ”と記載した。 しかし、結果的に日本は、アメリカによる中国と大陸北方の国(ソ連)の封じ込めも影響して、世界第2の経済大国として、アジアにおいて大日本としての影響力を行使しえた。
しかし、冷戦崩壊から始まる、中国・ロシアの台頭により、日本の戦後モデルは岐路に立たされている、といった感じです。
非常にざっくりとした分類わけですが、大きく日本の今後の指針を考える上で参考になると思います。 本書では、この考察の上にたって、日本は小日本、大日本、国際日本をうまくつかいわけて生きていく”中庸国家”たるべしと結論づけています。
確かに東アジアは、中国、ロシア(北方)、アメリカ(西洋)の3大勢力全てが強大化し、しのぎを削る場になりつつあります。これは日本の歴史以来はじめての困難な時代に入ったと言えます。 それだから、今まで一つの戦略をとっていればしのげたものが、通用しなくなったという意味で、それぞれの戦略をうまく組み合わして使う器用さが今後の日本には必要というのに私も賛成します。
具体的には、
1.大日本として 中国が強大化したからといって、日本は海外からの富を得ずに生きていくという選択肢はありえません。 経済成長をしないで、清貧に生きていくという考えはありえません。成長なくして現在の日本の問題点の解決はないでしょう。 (この話は「経済成長って何で必要なんだろう」飯田泰之他著 を読むと理解が深まるでしょう。)
そのために高付加価値産業を興し、途上国の作る安いコモディティ化した商品に対抗していく必要があります。 よって日本人だけでなく海外の頭脳を取り入れた上で日本の産業を強くしていくことが必要でしょう。 この点で、前回のエントリーで書いた、”労働市場改革を移民にあわせるべき”という結論にいたります。
2.小日本として 江戸時代にはもう日本は戻れません。それでも、蓄えたパワーを日本国民が内側に発展させるという小日本の考え方は有効です。 大日本の戦略で得た富を、福祉、教育、文化という点で国民に還元し、国民生活を豊かにする、そして更に江戸時代に発展したような日本の独自文化などを創出していくことが求められましょう。 本書にも書かれていますが、この文化というものが、コンテンツ産業として今度は海外から富を得るツールになりうるという点で大日本の戦略とも親和的です。
3.国際日本として 元来国と国とが対等につきあう主権国家体制は、西洋各国とのつきあい方において意味のあるものでしたが、21世紀において成長したアジア各国がその相手となります。 戦後日本はアメリカとの二国間関係だけしか国際関係の交渉を行ってこなかったようなものですが、これが今後は北朝鮮を巡る6カ国協議やG20、ASEAN+3などといったアジア太平洋の多数国間での交渉が重要化します。 このようにアジアにおいて、製品の国際規格の足並みをそろえてEUに対抗するなど、アジアにおける国際日本の姿勢が求められていくでしょう。
以上のような戦略が、今後中長期的にとられていくべきだと思います。 ある政策をうつ上で、その長所短所は当然あるはずで、こんな短所があるからこの政策はおかしい、というのはあまり反論になっていません。 そのため、上記のような大戦略を念頭におきつつ、政策立案、批判などが行われるべきでしょう。
私の考えなどはあまりにも曖昧にすぎるとは思いますが、政府はこのような大戦略を示して、こういう国にしようとしている、だからこの政策が必要なんだよ!という部分をもっと示さないと国民の不安は払拭されないでしょうねぇ。 今のままでは、自民がダメだったからそれとは違うことをするんだよ!としかなっていない気がします。
テーマ:国家論・憲法総論 - ジャンル:政治・経済
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